会報より

 今まで発行してきた会報から 皆さまに読んでいただきたいものや ちょっとしたトピックスなど載せて行きたいと思います。参考になさってください。

 

講演会 ヒューマン・スタジオ 丸山康彦さん

  不登校・ひきこもり ~ 本人が望んでいること ~

 

 2023930日(土)横浜市教育会館にて丸山康彦さんの講演会を行いました。

 丸山さんは、ご自身が高校1年生の時に不登校となり、7年かけて高校を卒業し、その後大学に5年通って教員免許を取り、高校の非常勤講師を1年務めました。

しかしその後の職が見つからず28歳の時からひきこもり状態になりました。

自分をコントロールしようとする親への怒りが強く、何度も親を問い詰め怒りをぶつけていた時期もあったそうです。現在は、ご自身の経験も活かしながら当事者に近い立場から支援しようと、相談室「ヒューマン・スタジオ」(藤沢市)を通して、当事者や家族の方々への支援を行っています。

 

 講演会では、ご自身の経験を振り返り、登校時に風景が逆さまに見えたりしたことや、ひきこもって動けなくなり食べて寝るだけの日々が続いたことなど、苦しかった頃の様子や心情について話がありました。

 そのような状況の中で、周囲からの対応で良かった(生きるモチベーションになった)こと、また無効だった(嫌だった)ことについての話がありましたので、いくつかご紹介します。

【良かったこと】

  父親が犬をもらってきてくれ飼うことになった

  子どもキャンプのボランティアに誘われた

  高校の友人から親切にしてもらった

 

【無効だったこと】

・親や周囲の人たちによる登校刺激

・担任による家庭訪問

・カウンセラーによる投薬指示

また 当事者・経験者としての発言として

・トンネルを歩き通させてほしい~自分に合ったペースとプロセスが叶う対応

・こだわりを否定しないでほしい~考えを変えさせるより、認めて対話し続ける

・家族・クラスの一員としてみてほしい

~「登校していない○○」より「我が子の○○/うちのクラスの○○」

などの紹介もありました。

 

そして不登校やひきこもりに至る経緯や本人の心理過程を考えると、本人が現状に何らかの違和感を感じ、無意識のレベルで「このままでは自分がつぶれてしまう」と予知し、ブレーキをかけているのではないかとの話がありました。本人の状況を上から目線で見下ろすように見ると治療や強制が必要であるように感じるが、いま 本人がどんな気持ちで何を望んでいるのか、また今できていることはどんなことがあるのかなど横からの(本人の立場に立った)目線で考えてみようという話は心に残りました。

不登校やひきこもりは「無意識のレベルで自分の命を守ろうとする行動ではないか…。」「どのような自分がそれを観ているのか。」 故 渡辺位先生の言葉を思い出します。上から目線になると今の状況を早く解決しなければと思いがちですが、横からの目線で本人の立場から考えるよう努めてみると、ここまでに至る本人の思いや努力について気づきがあったり、今できていることを認めることができるのではないでしょうか。

 本人の意思を尊重し、今の状態にあった対応をするためには、まず自分自身の視点を確認することが大事なのだと、あらためて考えさせられた講演会でした。

 

           ( 会報 No.278  2023.11.12発行 )

 

 廣瀬貴樹さん講演会 「 居場所が未来の懸け橋になる 」

 

 2022724日(日)横浜市教育会館にて、廣瀬貴樹さんの講演会を行いました。

廣瀬さんは、横浜市内で14年間小学校教員を務め子どもたちと向き合う中で「生きづらさを抱える子どもたちに とことん寄り添いたい」と考えるようになり、20213月に退職。学べる居場所“かけはし”を開設し、子どもや保護者の方々の支援を行っています。

廣瀬さんが子どもに寄せる思いや、支援活動についてお話を伺いましたのでご紹介します。

 

💛 子どもの心に寄り添いたい

 様々な状況で生きづらさを抱えている子どもたちは、傷ついた経験や孤独を感じていることが多い。まず、子ども一人ひとりの心に寄り添いそばにいることを伝えたい。そして子どもが本来持っている力を発揮してもらいたい。そのためには子どもが安心して過ごせる居場所が必要だと考えました。安心して自分の思いを話せたり、学ぶことができる場、人との出会いや社会とのつながりを広げていける場・・・。

子どもたちが自分の力を信じてパワーをためることができるような居場所作りを目指しています。

 

💛 学べる居場所“かけはし”

 「自分はこれを調べたい・探求したい」など、一人ひとりが持つ興味や関心(学びのしずく)を大切に、自分でやりたいことを決めて学びを作っていく。

わくわくする、夢中になれるなど、好奇心やチャレンジ精神が自分らしい感性を育み学び続ける力になっていくと考えています。

 自分の「好き」を大切にしていくことは新たな自分の発見や気づきにもつながっていくのではないかと感じました。自分のことを見守り、認めてくれる人との出会いは人生を歩むうえで大きな支えとなるはずです。

 子どもたちが安心して自分自身を信じる力と自分の可能性を切り拓く力を育む居場所を作っていきたいと語る廣瀬さん。

生きづらさを抱える子どもに寄り添いたいという情熱がひしひしと伝わってくる講演会でした。 ( y  

 

  

                 会報 No.276    2022年911日発行

 

 「若者たちに死を選ばせない」~NHKスペシャルを見て~

 

 「子どもの自殺」と聞くとドキッとします。

不登校で、子どもが学校に行かれなくなったとき、親は子どもがそこまで追い詰められているとは思えないことが多いでしょう。ですが例会でお話を聞くうちに「子どもが“死にたい”と言って驚いた」「子どもがほとんどベッドから起き上がることもできず、このまま死んでしまったらどうしようと思った」というような声を聴くことも珍しくはありません。そのような声を聞いたり、差し迫った様子を見て、死にたいほど追い詰められていたということに気づくのです。

 

これまでも夏休み明けの子どもの自殺は問題にされていました。ですが、ここまではっきりと「学校 行きたくない」と発せられる言葉の数と「自殺」の件数に相関があったということには驚きます。なんとなくは分かっていたと思います。でもなんとなくでは、ダメなのです。「学校 行きたくない」は子どもの心の叫びです。

親や、教師に言われるまでもなく、学校に行かれない自分はダメな奴で、社会に適応できない、居場所がないと子ども自身が感じているのです。

 

 

 学校に行かれない子どもに親が登校することを強制したら、子どもは家にいることもできず、本当に居場所を失ってしまいます。生きていける場所がないなら「死ぬしかない」と感じてしまうのも無理のないことでしょう。大人にできることは、「学校に行かないという選択肢を選んでもよいのだ」と子どもに伝えることです。そして「その選択は間違ったことでも、悪いことでもない」と示すことです。先にも書いたように不登校の子どもは学校に行かれないということだけで、自分を無力に感じ、自尊心が傷つけられています。「自分はこれで良いのだ」と思えなければ将来に向けて一歩を踏み出すことは難しいのだと思います。

 

宇宙船にいらっしゃる保護者の方は子どもの幸せを願いここにきていらっしゃいます。それだけでも素晴らしいと思います。そうは言っても、学校に行くことが当たり前の社会で、学校に行かず生きていかなければならないことは、色々なことが不安になると思います。そんな時、一人で抱えずに宇宙船でどうしていけばよいのか、皆さんと一緒に考えていきたいです。

 

子どもにとって、やはり親は大切な存在です。その親が自分のことを全力で守りたいと思っているのを感じられることは、必ず子どもの力になると思います。

 

             会報274号 2021年7月11日発行

 

 宇宙船はこれまで毎年、講師をお招きして講演会を行ってきました。

今年は会場の定員が制限されることなどもあり、講演会は中止にして、以前から関心のあった「しゃべるの会」を開きました。

 

 「しゃべるの会」は民間非営利相談機関「ヒューマン・スタジオ」の丸山さんが開催している会です。丸山さんが配信しているメールマガジンをテキストとして使用し不登校・ひきこもりについて学びます。また参加者同士が語り合い、丸山さんに質問することもできます。

 

 しゃべるの会はゆっくりお話をしていただけるように少人数で開催しており、今回は7人+スタッフの参加でした。

 今回、しゃべるの会に参加できなかった方もたくさんいらっしゃるので、ここで内容を少しご報告します。

  

 ここからは、丸山さんが話してくださったことを基に、感じたことをお話します。

 

『 “願い”と“思い” 』

 子どもが「明日は必ず学校に行く」と言って準備もして寝たのに、翌日になると起きられない、体調が悪い、結局学校には行かれない、という話はよく聞きます。

それは嘘をついているということではなく、本人の“願い”と“思い”が葛藤しているのです。丸山さんは“願い”と“思い”どちらも大切と言います。

 普通でありたいという気持ちが“願い”です。

「みんなは学校に行っているのに自分は行かれない、ダメな自分」という自己否定や、登校しようとする行動は、願いを叶えたいという気持ちから起こります。

一方自分を守りたいという自己防衛反応が“思い”です。

親からの働きかけを拒んだり登校できないのは、自分を(無意識のうちにも)守りたいという思いです。

 私は無意識であるがゆえに、言葉で「行きたくない」というのではなく、おなかが痛い、頭が痛い、起きられないといった身体症状になって表れると考えます。「行きたくない」と言えば、それは「ダメな自分」を自ら認めることになるからです。

私が自分ではっきりと、「学校に行かれない、行きたくない」という子どもがすごいと思うのは「ダメな自分」から「そのままの自分でOK」というところに進もうとする力強さを感じるからです。

 では自分で「学校に行かれない」と言えない子どもが弱いのかと言えば、そんなことはありません。子どもも一人の人間として、一人ずつ違った個性があります。

人一倍敏感な感性を持った子どもは、親の思いや世間の常識をくみ取り、とても強く払拭するのが難しい葛藤を抱えていると感じることが、これまでも多くありました。

 また“願い”と“思い”の葛藤は親にとっても同じようにあると思います。

子どもが「死にたい」と口にしたり、食事もせず動けなくなってしまったとき、親は一番大切なものは“子どもの命”だと気づきます。

それでも「“当たり前、皆と同じ”が染みついて学校に行ってほしいと思ってしまう」という言葉に、親もまた苦しんでいることがわかります。

 

                              会報 No.272( 2020.11.9 発行   )

 

 「 大丈夫、働けます 」を読んで 

               成沢俊輔 著  ポプラ社

 

 

 

 成沢さんは NPO法人Future Dream Achievement(FDA)の理事長です。

 

FDAは就労移行支援事業所です。

 

「空気が読めない、人間関係が苦手、笑顔が作れない、電車移動が出来ない、パソコンが出来ない、うつ病で会社を辞めてしまった、ひきこもりだ、シングルマザーだ、身体や精神に障害がある、薬物やアルコール依存の経験がある、警察のお世話になったことがある、自分に何ができるかわからない」様々な困難があり仕事に就くことが難しいと思っている人でも 成沢さんは『 大丈夫‼ 』と力強く言ってくれます。「どんな人にも必ずその人に合った仕事があり、誰でも絶対に社会の中で、当たり前に働くことができる」と信じ、“就職困難者支援”のために日夜全国を飛び回っていらっしゃるそうです。

 

 

 

 宇宙船にいらっしゃる方のお子さんの年齢は幅広いので、小学生など小さいお子さんの保護者のかたにとって子どもが働くということはピンと来ないかもしれません。けれど年齢が上がるにつれ、将来お金を稼いで自分で生きて行くことができるのか、と言うことは親の最大の関心事になるようです。

 

 

 

 成沢さんは何故「大丈夫」と言い切ることができるのでしょうか。一つには、これまでいろいろな困難がある人たちに仕事を紹介し、ただ紹介するだけで終わるのではなく働き続けて行くための手助けをしてきた、という事実と実践に基づいた自信に裏付けされているからです。もう一つは「社会に人を当てはめる」のではなくこれからは「社会が人に合わせる」番だという考えがあるからです。

 

 成沢さんは “強み”は一つあれば良い、と言います。出来ないことを無理にしようとして仕事に合わせるのではなく、自分の強みを知ってそれを生かすのです。“強み”なんてない、と思われる方もいるかもしれません。けれど大抵 物事の良い面悪い面は表裏一体です。欠点と思われることでも裏を返せばそれが長所になることもあります。現代の社会はマルチタスクを求められがちですが、「働くということは何もマルチタスクが出来て、空気が読めて、エクセルが出来て、プレゼン上手で、愛想笑いが出来ることを指すのではないはず」だと言います。一度に一つのことしかできない、と言うことは一つのことに集中する力があるということです。 

 

 

 

 こんなにパワフルな成沢さんですが、実は視覚障害があります。視覚を徐々に失う網膜色素変性症という病気で、子どもの頃から次第に視野が狭まり20代前半でほぼ見えなくなったということです。この本にはご自分の生い立ちも書かれていますが、その時の不安がどれほどであったかと思います。完全に視力を失いそれまでの価値観で生きて行くことが難しくなった成沢さんは2年間のひきこもり生活の経験をしています。けれど今は「この経験があったからこそ、今の仕事が出来ている」と書かれています。

 

 

 

 そんな成沢さんが「これだけは、本人の中になければお手伝い出来ない」と言うのが「“つながりたい”という気持ち」です。たった今ひきこもっている子どもを見ていると つながりたいという気持ちがあるようには見えないかもしれません。それは多くの場合 人間関係に疲れてひきこもっているからだと思います。しかし人との関わりが上手くできないからこそ、ひきこもっている状態が本人にとって納得でずに苦しんでいるのではないでしょうか。だとすれば誰もが“つながりたい”という気持ちを心のどこかでは持っていると思うのです。

 

 働くということは生きていくための手段であると同時に、生きがいや、目的になっている場合もあります。また、就職に特にハンディキャップが無かった人でも、仕事が辛いと思う時もあります。今の仕事を、大変なことがあったとしても、やりがいがあるとか天職と思える人は本当に幸せだと思います。

 

 

 

 宇宙船でお話を伺っていても、なぜ親は子どもが学校に行かれないことを心配するかと言えば、学校生活で社会性を身に付けたり、勉強しなければ将来自立していくことが難しいと感じていらっしゃるからでしょう。現代の日本では少しずつ変わってきているとは言え、学校に行かないという選択肢に偏見や不利益があることは事実です。

 

見守ることが大切な時期があると分かっていても、ただ見守っているうちに 手遅れになってしまうのではないかという 焦りも感じます。

 

 「どんな人にも必ずその人に合った仕事があり、当たり前に働くことができる」と言うことを “なるほど”と 納得することができれば、その不安も和らぐのではないでしょうか。生きていくということを 「働く」と言う視点から考えてみるきっかけとなる一冊でした。                                    (  R )

                    

          会報 No.268 ( 2019.5.12 発行 ) 

 

 

 

『暗闇でも走る』を読んで

 

 

 

著者の安田祐輔さんは1983年横浜生まれ、不登校・中退・ひきこもり・うつ・発達障害・再受験など、もう一度勉強したい人のための個別指導塾「キズキ共育塾」などを経営するキズキグループ(株式会社キズキ/NPO法人キズキ)代表です。

 

 

 

本の表紙には「発達障害・うつ・ひきこもりだった僕が不登校・中退者の進学塾を作った理由」、そして帯には「ドンくさい僕は、こうして道を築いた! 

 

発達特性に加え父のDV、家ナシ、非行…地獄から抜け出すため偏差値30から一流大学へ。苦難を乗りこえ、困難を抱えた若者のための日本初の大規模な塾を立ち上げた起業家の感動実話。」とあります。

 

本を手にしてもらうためには出版社としてはセンセーショナルなうたい文句が必要なのだと思います。これだけを読むと「安田さんはきっと 元々優秀な人だったんだ」と感じてしまいます。けれど本を読むとそこには 本当に真っすぐで一生懸命な青年がいました。

 

 

本の中で安田さんは何回も「僕はドンくさい」と書いており、発達特性のために空気が読めず辛い経験をされたことが記されています。

 

現在の日本の社会では、“これからは個性や独創性が重要”と言われながらも実際には 同調圧力が強く、全体に合わせられない人は疎まれてしまいます。元々 相手の気持ちを察し、立ち回ることは思いやりであり、決して悪いことではなかったはずです。

 

しかし最近は おかしな“忖度”が増えて立場の強いものは、何も言わなくても周りは合わせるのが当たり前と思っているのか、どう考えても納得できないニュースが増えています。

 

 

 私は安田さんのことを“ドンくさい”とは思いません。「世界の紛争地に対して貢献できることはないか」と考えた安田さんは、学生時代に放浪の旅に出ます。世界の途上国を一人で旅する行動力もさることながら、現地の人たちと仲良くなる力には、高いコミュニケーション力を感じます。

 

「宇宙船」でも、周りと合わせられず孤立したり、また 必要以上に周りに気を使い疲れ果てて登校できなくなってしまった子どもの話を聞くことがあります。あまりにも同質であることが求められ、子どもがあるがままの姿では学校にいることが許されないのです。

 

 

 安田さんは放浪の旅に出たことで「人間にはどんなに貧しくても“お金や暮らし向き”によってではなく、『尊厳』のようなものによって生きている」と考えるようになりました。

 

私は不登校の子どもは、この『尊厳』を否定された状態なのだと思いました。だから、とても苦しいし、自分のことを「ダメだ」と思い込んでいる、実は 思い込まされているのです。

 

 

 「キズキ」ではそんな子ども・若者たちに ただ勉強を教えるのではなく、寄り添い本来の力を取り戻すための手助けをしています。

 

子どもの中には学校の勉強には馴染まない者もいるでしょう。けれど学校の中でするものだけを勉強と考えずに 生きていく中で学ぶことを広く勉強と捉えるなら 学びたくない子どもはいないと思うのです。

 

それぞれの子どもに合った学び方が認められること、また 様々な価値観やあり方をお互いに認められること、そんな考えが支持され、「不登校」が問題ではなくなれば良いと思います。

 

 「宇宙船」スタッフの濱岡さんのご紹介で、来年1月に安田さんの講演会が開催できそうです。

 

安田さんは「僕は本当に運が良かった。あの孤独から抜け出せたのは、単なる“偶然”だった」と書いておられます。

 

確かに人との出会いは一期一会で偶然の出会いがあります。けれどそれをどう生かせるかは やはりその人次第で、安田さんの強い信念を感じます。

 

もし講演会にいらして頂けたら 「どうして過酷な状況でも自分の物語を見失わずにいられたのか」伺ってみたいです。その時は皆さまもぜひ一緒にお話を伺いましょう。 

                                          (「暗闇でも走る」安田祐輔 著 講談社 

           2018.4.26 第一刷発行 ) 

 

                      会報 No.265 ( 2018.6.10発行 )

                                                                                        

 

 「登校拒否・不登校を考える夏の全国大会 2017in東京」に行ってきました!

 

 

 

NPO法人登校拒否・不登校を考える全国ネットワークが主催の全国大会が毎年 開催されています。今年は東京の早稲田大学が会場で、スタッフの二人と私の三人で参加して来ました。

 

子どもたちの生の声や、奥地圭子さんの基調講演「そろそろ『不』登校からの解放を」、と どれも聴きどころたっぷりでした。

 

茂木健一郎さんの記念講演「脳科学者が語る不登校」はめちゃくちゃ面白くて、ぶっ飛んでいて、狭い考えに縛られている必要は無いのだと心の底からの“アハ”体験です。

 

あの熱い語りをそのままお届けするのは難しいかと思いますが、少しご紹介します。

 

 

「不登校なんて何の問題もありませんよね」「学校なんていらないんじゃないですか?」と開口一番。

 

AIがいよいよ実用化される世の中になって、今ある職種のうち半分以上は機械やロボットにとって替わられるのではないかといわれています。

 

ロボットにはなくて人間にあるのは創造性です。

 

今の学校の教育は答えがあるものを覚えることが多く、受験も差をつけるために重箱の隅をつつくような問題が出題されます。

 

子どもが自分の好きなことに熱中しても、それは“勉強”ではないと認めてもらえません。

 

「創造力?うーん難しいな」と思われるかもしれません。でも、誰でも子どもの頃、「これはなんでこうなっているんだろう?」とか「大好きなこと」とかあったと思います。

 

それを自分の興味に従って、調べたり考えたりするのが探求学習でそれこそが大切だということです。

 

茂木さんは子どもの頃 蝶が大好きで、夢中になっていたそうです。

 

「蝶の研究だったら理科の勉強?」

いえいえそれだけではなく、分布を調べるなら地図も分らなくてはいけないし、学名を知りたければ外国語も必要?

 

実際、世の中の問題は教科ごとには分かれておらず、色々なことを複合的に考えていくことが必要です。

 

子どもの頃から探求学習をしてきた子どもは本当の意味での学ぶ力や創造力が付くのです。

 

茂木さんは「日本の学校は収容所みたい、これまで品質管理のためにやって来た。でもこれからは色々なものを生み出していくために多様性がとても大切だ」とおっしゃっています。

 

不登校の子どもはまさに学校に縛られることなく探求学習が出来るのです。

 

そうは言っても、世の中の常識から子どもたちは不登校を「無駄だったとは思っていない」とは言うものの、苦しんだり気にしたりしています。

 

子どもシンポジウム「聞いてよ、私たちの気持ち」をずっと聴いていらした茂木さんは、私たちに「子どもたちに『気にするな、そっち(自分の行きたい方)に行って良い』って言ってあげて」と語り掛けてくださいました。

 

本当に心からそう言ってやれる大人が増えれば、子どもたちが気にすることも少しは減るのではないでしょうか。

だって子どもは何も悪いことはしていないのですから。                                             ( R )

 

                会報No.262 (2017.9.10発行) 

 

 

思春期講座「子どもの意欲を育てるために」

~高橋健雄先生のお話を聞いて 

 

829日(土)上大岡のウィリング横浜で「思春期講座」がありました。

 

講師の高橋健雄先生は、神奈川県立高校の教諭で長年、生徒や保護者の悩みの相談に乗ってこられました。宇宙船でも2014年に講演会をお願いしてお話を伺っています。

 

高橋先生は、いつも子どもの気持ち、親の気持ちに寄り添ってくださいます。そして、現役で高校生たちと接していらっしゃるので、今の子どもたちを取り巻く状況や、子どもたちの実際の行動や考えを非常によく知っていらっしゃいます。親は子供のことを気にかけていても、学校での様子や、ネットの発展で自分の子ども時代とは様変わりした友人との付き合い方などよくわからないことがたくさんあります。高橋先生のお話から今の子どもたちの置かれている状況の厳しさを改めて感じました。

 

 「子どもの意欲を育てるために」という題目でお話を伺いました。現代は、希薄な人間関係の中で自分嫌いな子どもが多いというのはよく耳にします。ましてや、不登校の子どもはみんなと同じことができないことに罪悪感を持ちやすく、そのことは先の経験談でも述べられています。

 

「自尊心を大切に」というお話からご紹介します。

  1. あなたは自分の能力や努力を認めてもらっていい         …努力の承認

  2. あなたは冒険して間違えても失敗してもいい           …試行錯誤の承認

  3. あなたは自分の意見や価値観・感情を正直に話していい       …意見感情表現の尊重

  4. あなたはあなたが何をするか自分で選んできめていい         …自己決定の尊重

  5. あなたはあなたのままでいい                   …子どもの存在肯定

     この中で4番目の「自己決定の尊重」のお話が印象的でした。

     汐見稔幸先生の日本とフランスの保育比較の研究を紹介してくださいました。0歳児がハイハイできるようになった時の保育者の関わりです。日本ではハイハイする赤ちゃんに保育者が「こっちだよ」「がんばれ」など大きな声で応援をしているのに対し、フランスでは赤ちゃんを静かに見守り、赤ちゃんは自分の行きたいところに自由に行く、ということです。フランスでも以前は日本のような関わりが多かったそうです。しかしそれでは自分の行動を自分で選んでいるという感情が育ちにくくなってしまい過剰な期待を追わせてしまうので、今のような見守る関わりへと変わっていったということです。私自身は親や保育者が赤ちゃんに声をかけ応援すること自体は決して悪いことだとは思っていません。子どもは親の応援に愛情を感じ、期待されることでその能力はより伸びていきます。研究者の先生方もそのあたりは百も承知で、その上でのこのお話だと思います。

     高橋先生がご自分のお子さんを保育園に送迎していたときのお話です。子どもがなかなか保育室に入ろうとしない時も子どもが自ら部屋に入るまで、待っていらしたそうです。素晴らしいですね。振り返り、私の子どもが保育園に通っていたときは、嫌がる子どもを、どんどん保育室に押し込んで慌てて職場に向かっていました。私は保育士をしているので「保育園に行きたくない」「お母さん、お父さんと離れたくない」と言って泣く子どもを置いて職場に行く親が決して平気でないことはよく知っています。子どもの意志を尊重したくてもできないときも現実にはたくさんあります。だからこそ、できるときは子どもの要望はできる限り受け入れてもよいのでしょう。

     100パーセント子どもの意志を尊重できなくても、子どもには子どもの意志があるということを親がちゃんとわかっていることが大切なのだと思います。生まれたばかりの赤ちゃんにも「心」の芽生えがあり意志があります。ましてや思春期の子どもたちは「自分はこうしたい」ということでいっぱいなはず。「何もやりたいことが見つからない」と言ったり、無気力に見えたり、これまで自分で決めてこなかったことで、子ども自身どうしていいかわからなくなっていることも多いといいます。それは親との関係だけの問題ではなく、先行き不安な世の中で、よく考える人ほど、現実から目をそらさない人ほど身うごき取れなくなるのは無理からぬこととも思っています。

     失敗したり、間違えたり、ぼーっとしたり、そんなことも認めながらゆっくり進んでいけたら良いと思います。高橋先生のお話がいろいろなことを考える良い機会になりました。

                           ( R )   

 

                                会報No.258 (2016.9.11発行) 

 

「学校に行かないこどもとどうつき合うか」~親の会パレット主催~報告レポート

221日(土曜日)ひらつか市民活動センターに於いて内田良子さん(心理カウンセラー)を迎えて講演会と相談会がおこなわれました。内容を抜粋してご報告します。

1.不登校といじめ

まず、いま子どもたちがどのような状況にいるのか文科省の資料等を参考にしながら現状についての話がありました。嫌がらせをする生徒の存在、非行グループとの関わり、教師との関係、無気力や不安など子どもたちが様々な問題を抱えながら生活していることを改めて実感しました。

2.不登校は命の非常口

 つぎに、不登校の子どもたちを支援する側の姿勢について話がありました。

「支援する側に不安や焦りがあると結果的に子どもを追い詰めたり、事態が悪循環に陥りがちになる。」「不登校を、子どもたち自身が問題を解決するために選んだ一つの方法や手段であると捉えることができれば、いま子どもたちが何を必要としているか考えられるようになる。」などの話は、支援者の対応について考えさせられました。子どもたちが自己肯定感をもって安心して生活できるような支援を心がけたいものです。

3.不登校の子供の権利宣言

 そして、全国子ども交流合宿「ぱおぱお」~2009~で発表された「不登校の子どもの権利宣言~全文」の紹介がありました。

 *学校へ行く、行かないを自分で決める権利がある。

 *どのように学び育つかを選ぶ権利があり、安心して休む権利がある。等13項目。

このような権利が広く認識され、保障されれば多くの子どもが自己否定感から解放され、新たな歩みを始められるのではないかと心強く感じました。            (Y.H.)


                                       会報No.251(2015.4.12発行)より


 12月14日 子育て協会の高橋健雄さんをお招きして講演会を開催しました。お話の後、質疑応答の時間をとって頂きました。質問者だけでなく多くの方が聞きたかった悩みに答えて下さいました。

 

Q 子どもの将来が心配です。未来につなげるために 今 母親に出来ることは何でしょう。


A  一番大切なことは、母親が大丈夫だと思うことです。

 母親の潜在意識の中に不安感や心配なことがたまっていると子どもは母の不安・心配に応えようとします。例えば、暴走族の子どもの母親が事故を起こしたりケガをしたりするのではないかと「心配、心配」と言っていると行動がエスカレートしていきますが、「あなたは大丈夫だから行ってらっしゃい」と言って送り出すと収まって行きます。不登校の子どもにも「あなたは大丈夫だと、お母さんは思っているよ」と伝えることが良いです。それでも不安に思うのは当たり前のことです。不安は子どもに向けずに「宇宙船」に来て話しましょう。




Q ゲームをやりつくし新しいゲーム機が欲しいと言っています。買ってやっても良いでしょうか。


A 買ってやるとよいでしょう。基本的には子どもが望むことを望むだけすることです。大切なのは親の望むことではなく子どもが望むことだと言うことです。頼まれていないこと(部屋の片づけなど)を勝手にしては行けません。小さい子どもには子どもが「ママ抱っこして」と来た時に抱きしめることが愛情表現になります。もう抱っこは出来ない成長した子どもには子どもが親に望むことを叶えてやることが愛情表現になります。子どもは親の財布の中身をわかっていて親が出せるぎりぎりの金額を見定めたかのような要求をしてくることがあります。それを叶えてやると言うことは自分が親に認められているということになり、子どもの自尊心を高める一つの方法です。


            会報No.249(2014.12.14発行)より

 

                    


    

 子どもを考える~基本的信頼感と自己肯定感を育むために                                                                                セミナーレポート 

 

 222日(土)23日(日)、ワークピア横浜にて佐々木正美先生(小児精神科医)のお話を伺いました。近頃の子どもは自己肯定感が低いとよく言われます。特に不登校の子どもは学校に行っていないことに罪悪感を抱き 自分はダメだ、価値がないと思っていることも少なくないようです。

 

基本的信頼感、自己肯定感はどのようにして育つのか、エリクソンのライフサイクル論を基に分かりやすくお話をして下さいました。

 

○ 乳児期:基本的信頼(希望)/不信(ひきこもり) 望んだように愛される、無条件に愛されている実感が人を信じる心を育てる。人を信じることが出来て初めて自分を信じることができる。

 

○ 幼児期:自律性(意思)/恥と疑惑(脅迫)  他者に対する安心感と信頼感、自分に対する安全感と自信が一段と発達する。そして自己の中に他者を積極的に受け入れる。/自己の確立・形成  基本的信頼感が獲得できて初めて「しつけ」ができる。

 

紙面の都合でライフサイクルの全ての段階を記載することはできませんが、基本的信頼感、自己肯定感を育てるには子どもの頃、特に乳幼児期の養育者との関わりが極めて重要だということです。もちろん現在の不適応等の原因が全て乳幼児期にあるというわけではありませんし、何らかの理由で乳幼児期に十分な関わりが出来なかった場合も後からの育て直しも十分可能だということです。

 

思春期、青年期でひきこもったり他者との関わりを持てない場合には、相手が安心して何でも話せるような関係を作るようにします。そのために どうしても出来ないことは出来ないと言うが、基本的に全てを受け入れ、何でも認めるくらいの気持ちで向き合うことが必要だということです。

 

これは決して簡単なことではありませんが、日ごろ宇宙船で話していることとも通じると感じました。 

                     ( 片山 )                                                                            

 

                                        

 

思春期の子どもとの関わり~カウンセリングを通して

                  研修会レポート 

 

118()、ウィリング上大関にて高橋健雄先生(高校教師・カウンセラー)の話を伺いました。高橋先生は長年にわたり不安を抱える子どもたちや保護者の方の支援を続けていらっしゃる方です。

 

研修では、相手の話を“聴く”時、いくつか気をつけると良いポイントについて話がありましたので、その内容についてお伝えします。

 

  1. まず、相手が安心して話せるような雰囲気を心がけること。相手の立場に立ち肯定的な関心を持って聴く姿勢が大切です。

  2. そして、相手の話を遮らず最後まで聴くこと。基本的には提案やアドバイスなどは控えフィードバック(くり返し)や共感を心がけましょう。

  3. 相手が安心して話せるようになるとグチなどが出てきます。その中には、今抱えている問題を解決する糸口になるようなことが含まれている場合もあるので、根気よく耳を傾けましょう。話をしているうちに本人の中に気付きが生まれる場合もあります。

  4. また損得や良し悪しなどの評価をせずに聴くこと。過去や未来に視点を置かず相手が今どのように感じているのか現在の気持ちを聴くことも大事なポイントです。

     

    一般的に話すことより聴くことの方が難しいと言われます。また「話上手は聴き上手」という言葉もあります。真に話上手な人は、相手の表層的な言葉にとらわれずフィードバックや共感をしながら話をしているのかもしれません。

    人の話を聴くことの難しさを改めて感じるとともに聴くことについて もっと学んでみたいと感じた研修会でした。                        

                                 ( Y.H. )

 

                                        会報No.245 (2014年3月9日発行) より

 

不登校相談会に参加して 

  

  3月にNPO法人楠の木学園の武藤先生をお招きして、特別例会を開きました。その時スタッフのMさんが体験談を話して下さったのですが、そのお話が苦しかった時の気持ちや頑張ってこられたことなど率直に語られて、こころに響きました。後日 神奈川県学校・フリースクール等連絡協議会と神奈川県教育委員会主催の「不登校相談会」で体験談を話してくれる方を探していらした武藤先生が「ぜひMさんにお願いしたい」とおっしゃりMさんも快く引き受けて下さり 先日6月1日、体験談を話されました。

 宇宙船からはMさんを含め3名が参加しましたので その時のことをご報告します。

                              

不登校相談会に参加して

不登校相談会へ56年振りに伺いました。その頃より会場も広く、たくさんの親御さん、お子さん連れの方もチラホラ来ていました。個人的には、以前より不登校に関してオープンになってきた感じを受けました。座談会では、不登校していたご本人、親御さん、の計4人の貴重なお話を伺いました。ご本人達の苦しんでいた頃の辛さ、少しずつ元気を取り戻す様子や、これからの未来のことを語る力強い言葉に、人としての成長、強さを感じました。親御さんのお話には、不登校から今までの道のりのエピソード1つ1つに、うんうんと納得したり、そうそうそうだよねと共感したり、周りの親御さんも、同様に聴きいっていました。

一時間弱の短い時間でしたが、参加者の溢れる思いがいっぱい結まった元気がもらえた座談会でした。      

                    ( N.Y. ) 

                                                     

 

体験談をお話して

大勢の聴衆の前で話をすることが初めてなので緊張しましたが、コーディネーターさんのおかげで少しは落ち着いて話せたかと思います。

私が自分の体験を通して伝えたい事はまずは親が少しでも子供の事を考えない時間をもつこと そして 一時でも楽しくなることをして笑顔を取り戻しましょう ということです。

親の笑顔は子供のエネルギーになります。

そして心配や怒りがたまったら 宇宙船で吐き出しましょう。 共感出来る仲間がいます。

不登校解決への糸口をいっしょに探ってみませんか? 

                    ( メイ )

 

            会報No.241(2013.6.9発行)より 

 

 

 

『 聴くこと 待つこと 見守ること 』

 

 

今、改めてこの1年の会報や相談会のメモを読み返して見ますと、宇宙船に来られた方々一人一人がご自分のことや、お子さんへの思いを、真剣に本音で語って下さっていることに深く感動します。

 

 個々人それぞれの事情や悩みは全く異なるにしても、例会でも、相談会でも、いつも大きな共通のキーワードは『聞く(聴く)こと』、『待つこと』、『見守ること』だったと思います。

 

 ☆まず、子ども(相手)の話しをしっかり聴くということです。

いつも聞いているつもりでも、本当は聞いていないということに気づくことが大切です。聞いているようで、聴いていないのです。

  

 子どもが自分自身の気掛かりなこと、気にしていることを言った時「そんなこときにしなくていいよ」と理解を示すのではなく《それでは、子どもは親が自分の話しを聴いてくれないと感じてしまう、とは内田さんのお話でした》、親は真っ白な、素直な心で子どもがどう感じ、どう傷ついたかをじっくり聴いてあげることが大事ということです。

  

 身近な人や父や母に話を聞いてもらうことにより、子どもの心はどんなにか楽になり、そのことにより、今(現在)の事を深く考え、今を肯定できるようになり、そこで初めて、先(未来)のことを考えるエネルギーや余裕が出てくるからです。

 

 子どもに限らず、ヒトは誰でも話すことによって、心の傷を癒すことが出来ます。

 きちんと話すには親身になって聞いてくれる信頼できる人がいることが必須です。

 

 でも子どもはなかなか傷ついた自分のことを語ってはくれません。子どもが自分のことを話し出してくれる時期はいつなのか?親として悩むところです。

 

 ☆子どもが自分の事を話してくれるタイミングを待つということ。

この待つということはどういうことでしょう?

親として出来ることは次のようなことです。

 

・不登校、ひきこもりで家の中で過ごしている子どもの今を大切にすること。

・子どもの望まない学校の事や先の事は話題にしない。

・口に合った美味しい食事を作り、安心して寝られる居場所を家庭の中に作ること。

 

 ☆子どもは家を居場所として安心して休めることで、自分が受け入れられ、見守られていることが感じられ、それによって、自分を肯定することが出来、少しずつエネルギーが溜まり、自分のことが話せるようになり、動き出すことも出来るようになるのです。

 

 くりかえしますが、親がどうして欲しいかではなく、『学校よりも何より、今あなたが生きていることが一番大事』というメッセージを心から子どもたちに伝えることが出来たら、子どもたちは心を開いてくれるでしょう。

 

 学校に行っていない、行けないでいる子どもたちに「家でゆっくりと過ごし、今を大切に」と言いたいのです。

 かく言う私が、なかなか難しく、ずっと出来ずにいたことです。

 

 話は尽きませんが、例会でまたお互いに学びあいましょう。

 

                    ( M.M. )

 

                 

           会報No.234(2012.3.21発行)より

 

 

 

2001年「宇宙船発足十周年記念公演」として行われた

渡辺 位先生の講演の中から、最後の部分の抜粋をお届けします。

 

『 自分を知る そして相手を知る 』

 

 今、現在目の前にいる子(相手)を全く忘れて、昨日はこうだったとか、これから先どうなるのかと言っているのは、今の相手の現状を否定しているのと同じですから、当の相手が子どもであれば自分より偉いとか強いと信じる大人が自分の現状をそう思っているんだから、本当に自分の現状は不安に満ちた駄目な状態に違いない、と思いこんでしまうのです。逆に、相手の ”今”に全面的な信頼を向ける大人がいれば、当の相手は自分の現状を信じ、安心して次の一歩を踏み出せるようになれるのです。

        ~~~  中略  ~~~

 要するに、子どもの痛みというか、置かれている状況を、どれだけ我々が感じとってわかるかということが大事なことだということです。

 

 そのためにもう一つ是非必要なのは、自分を知るということです。自分は何に拘っているのか、時分は何を企てているのか、例えば、不登校状態の子を前にした時、学校に行かなくて良いのかとか、どうやったら行かせられるのかとか、うまく行かせるには・・・などと、時分の気持ちや考え方を中心にした思いを持ちがちです。そこで、目前にする相手や、状況について、そしてその ”今” などについて、時分はどういう態度をとっているのか、自分の心の内を知ってみる。それは本当に大切なことだと思います。

 

 仕事を辞めてから一層それがよく分かるようになりました。要するに人は、つい気づかないうちに、子どもに限らず他の人に対して、何か自分の思いで相手に仕掛けたり、相手を作り変える操作するなどしているものです。でも、その前に、相手に何かをすることではなくて、何かしようとしている自分がいることを、先ず自分で知ること、それが相手を尊重することにもつながるのです。

 

 不登校やそれにかかわる昼夜逆転、引きこもり、家庭内暴力などといった、子どもの示すいろいろな現象によって引き起こされる大人自身の不安から、つい、その現象をなくしてしまいたい、目の前から消し去りたい、それにはどうしたらよいかなどと考えがちですが、その前に、なぜその現象によって大人自身が不安になるのか、その自分自身を知ることがなにより大切だと思います。

 

         会報No.180(2007.1.17発行)より